〜屈辱的惨敗から立ち直るために〜 CL準々決勝 バルセロナ対バイエルン
スターティングメンバー
前半
迷走しつつもナポリに勝利したバルセロナとチェルシーに快勝したバイエルンとの一戦。巷では事実上の決勝戦とも言われ、準々決勝の試合の中でも特に注目度の高い試合でありました。事実上の決勝戦なんて今思えば本当に恥ずかしい限りですが… また、試合開始前の時点で13点を記録していたレヴァンドフスキが13-14シーズンにロナウドが記録した17得点に追いつくことができるのかという意味合いでもこの一戦を楽しみにしていた方は多いはず。
■バイエルンのハイプレス
試合開始のホイッスルが鳴り、ブスケツがボールを持ってボールを回し始めた、かと思いきや試合開始5秒でボールを失うバルサ。あのブスケツがボールをロストしたわけですから相当なプレッシャーがかかっているのでしょうね。このようにバルサは試合開始直後からバイエルンのプレスに苦しむことになりました。
バルサはボール保持時ビダルを左WGに添えた4-3-3のような形でした。レヴァンドフスキ、ミュラーのどちらかがブスケツをマークしもう片方がCBに対してパスコースをカットしながらプレス。レヴァンドフスキ、もしくはミュラーがプレスをかけたCBの逆サイド側にいるSH(図だとニャブリ)がSB、CBのパスコースをカットしながらプレスしていました。また、2ボランチはバルサのインテリオールを、両SBはバルサのWGを、CBのどちらかがスアレスをマークするという具合になっておりました。
■カウンターをするバルサ
基本的には上のような形を元にしてバイエルンはプレスをかけておりました。一見完璧そうに見えますが、当然弱点は存在しておりました。
先程ニャブリがSB、CBのパスコースをカットしながらテアにプレスをかけに行くと書かせていただきましたが、一つ目の弱点はここにあります。パスコースをカットしながら、とは言っても上を通されたらどうしようもできないんですよね。19分30秒のシーンがまさにその例。前に出たニャブリを確認したテアがアルバにフライパス。そこから前進し結局メッシがシュートするに至りました。ただ当然バイエルン側の選手も前に行きすぎるとSBにボールを通されるというのはわかっていたので、高頻度でこのプレーを再現できたというわけではありませんでした。
もう一つの弱点は割とバイエルン側がマンマークの意識が高いということ。上の図をもう一度ご覧ください。チームとしてマンマークの意識が高いと守備があまり得意ではない選手は降りて行く選手にそのままついて行って自らの後方にスペースを作ってしまいがち。さらにバイエルンは守備時に縦と横がとてもコンパクトということもあってデイビスが空けてしまったスペースは大きくなってしまっていました。このようにして空いてしまったスペースを使ったのは誰か。そう、セメドやロベルトのような選手でした。
右サイドのことを多めに触れましたが、左サイドも負けておりません。やはりマンマークとなるとサイドにいる選手に目が届きにくくなるもの。バルサが記録して2点とも左サイドのアルバの抜け出しからゴールを演出しました。
ここまで試合開始から20分のあたりのに起こっていたことを中心に書いてきました。1-1で割とバルサが攻めていることが多かった時間帯ですね。正直僕はこの時、「2点くらい点を入れれば勝てるんじゃないか」とすら思っていました。ただ悲しいことにバイエルンはこの後ペリシッチが点を決めて2-1にし、その後ズルズル点を決められていきます。
■ズルズル点を決められたワケ
一番大きいのはメッシ、スアレスのプレスの強度が落ちていったことが大きいでしょう。ミュラーやレヴァンドフスキの運動量と比べると試合開始時点から運動量足りてないと言わざるを得ないですが、いつもに比べれば彼らは頑張っていたと思います。最低限ボランチに前を向かせないということはできていました。ただ試合が始まってからしばらくした時、大体20分頃からプレスの強度が落ちチアゴも自由に前を向けるようにな
りました。こうしてバルサの守備的な弱みをバイエルンから直接使われるようになるのです。
この中で一番問題があったのはSB裏。何が問題かってロベルトもセメドも前に出てプレスすることが多くてプレスが失敗した時の保険となる選手がいないんですよね。そしてこのスペースを使われてしまった時はピケがケアしにいくけど、その代わりゴール前にラングレしかいないという状況になって… このスペースを使われた例が1-1の均衡した状態を破ったペリシッチのゴールシーンなど。このSB裏のスペースはチアゴが前を向けるようになってから配球されるようになった印象です。
あと、バルサのディフェンスラインはボアテング、アラバからのロングフィードを気にしていたせいかラインを上げることがあまりできていませんでした。こういうことが起きてしまうのは正直しょうがないと思いますが、バルサのCBに足が速いタイプの選手がいれば…とは考えてしまいます。
また、ライン間、CB裏をもろ使われたシーンとして3点目のニャブリのゴールが挙げられます。2CFの前プレが機能しなくなったことで自由に楔のパスを出されるようになりバルサはライン間を使われ、そしてライン間で受けたゴレツカがワンタッチで足の速いニャブリにスルーパスを出して足の遅いバルサCB陣と競争させる。バルサの選手構成によりできてしまった弱み(2CFが守備できない、CBが足遅いなど)を使われてしまったゴールでありました。
少し余談になりますが、今後バルサが変えていかなきゃいけないのはこういう弱みの部分をなくしていくところですよね。フロントと現場の考えが一致していないから弱みをなくすことができる選手を獲得できない。バイエルンのようにフロントと現場が同じ目標を持って切磋琢磨しているクラブにバルサもなってほしいものです。
後半
セメド、ロベルトサイドでボコボコにされたバルサはロベルトをグリーズマンと交代。前半に左SHにいたビダルを右SHに、グリーズマンを左SHにしました。
この修正により右サイドでの守備が改善し、バイエルンの攻撃を多少は防げるようになりました。そして迎えた57分にスアレスらしいゴールを決めて試合は2-4に。
ただ、守備が改善されたとはいえ前半同様バルサはラインを上げれないところや前からプレスをかけれないところはそのままなのでやはりバイエルンにボールを持たれる展開が続きます。そしてスアレスが点を決めた6分後、デイビスのフェイントからセメドを突破され失点。その後はバルサ側の我慢がなくなって失点を繰り返す展開になり、試合が終わってみれば2-8というスコアでした。
試合が終わった直後は8点も決められたということに対して実感が湧かなかったというか、唖然としておりました。負けることはある程度覚悟しておりましたがここまでボロボロになるとは夢にも思っていませんでした。しかしこの大敗は起こるべくして起こったものではないかと思います。
■バルサとバイエルンの違い
そもそもサッカーに勝つためには何が大事になるのでしょうか? サッカーは1人の選手が個人で何人もドリブル突破して大量得点を狙えませんし、ゴールキーパー1人で全てのシュートを防げるわけではありません。このように1人で出来ることには限界があるので、各チームはいろんな選手でパスを回すことでゴールを生み出し、11人で守備を頑張ることでゴールを全力で防いでいるわけです。
この例は極端な話ですが、要するに互いに協力することで弱みを消しあい大きな連携を作り出すことがサッカーでは重要になると思うのです。少し大雑把すぎる感はありますが、バルサとバイエルンの違いはここにあるのではないでしょうか。例えば、バルサフロントと現場の考えが一致していない(協力できない)が故にフロントが大金をはたいていなぜ獲得しようとしたのか不明な選手を獲得して監督は上手くチームに組み込めず苦労する、そのためにバルサの負の要素をなくすことができる選手の獲得、正の要素よりも負の要素の部分が目立ってきてしまっている選手の放出がうまくいっていないなど…
このような数年間に渡る積み重ねが出たのがバイエルン戦。もうこんな試合は見たくありません。しかし、この敗戦を過度に重い悩み続けることはないと思うのです。当然バイエルン戦の敗因を見極める必要はありますよ。ただこの敗戦を気にしすぎてコンディションを落としてしまうなんてことは起こってほしくないですからね。特にテアは心配です。彼はこの敗戦以降調子を落としていくなんとなったらそれこそ、この敗戦以上の悲しみがこみ上げてくるでしょう。
確かにこの敗戦は永遠に残り続けますし、これからのバルサにすごく大きな不安を抱いてしまいます。ただ、数年後を良くするためには今から悪かったところを改善するしかないとも思うのです。そのために行うべき最善のアプローチをフロントが行えることを願っています。